Rugbrød med asparges

アスパラガスのスモーブロ

デンマークは春たけなわ、郊外の菜の花畑が黄金色に輝いています。

アスパラガスは、デンマークの5月を代表する食材です。旬のアスパラガスを楽しむ慣習はドイツでの愛おしみ方の方が格段に徹底しているとはいえ、アスパラガスがもたらす季節感は、デンマークでも大切にされています。日本の筍のように、今年も楽しんでおかないとね、と、思ってしまう食材です。

アスパラガス栽培は、種まき以降の2年間は株をしっかり生長させる時期なので、収穫は3年目からが一般的です。5月から夏至まで収穫できますが、夏至が過ぎると、太陽の恵みがある間に次の年の収穫に必要な栄養とエネルギーを蓄えるため、収穫を止めます。そのため、アスパラガスは5月と6月に楽しむ特別感の高い食材です。

天ぷらにしてもおいしいアスパラガスですが、デンマークでの楽しみ方はオランデーズソースとの組み合わせが王道。オランデーズソースは、オイルの代わりにバターを使って作る温かいマヨネーズのようなソースで、まったりとした口触りがアスパラガスとよく合います。日本の春先の出会いもの、筍と若布に匹敵する黄金の組み合わせです。それぞれの組み合わせを介するのがお出汁とバターというのも双方のお国柄をよく表していますね。オランデーズソースを絡ませたアスパラガスを口に含むと、あぁ春だなぁと嬉しくなります。デンマーク的には「つけ合わせ」は旬の地海老が定番。アスパラガスの存在感が大きいため、あくまでもアスパラガスがメインで海老がつけ合わせという位置関係も、デンマークでは異例です。

アスパラガスとオランデーズソースの組み合わせは、誠文堂新光社刊「北欧料理大全」(75 ページ)で、カトリーネ・クリンケンさんが作りやすいレシピを紹介しています。お試しになってくださいね。

アスパラガスは、サラダの素材としても優秀ですね。夜8時が過ぎても明るく、清々しい気候なので、サラダを献立に組み入れると夏めいた雰囲気が楽しめます。コンピネーション・サラダとして旬の野菜やタンパク源をヴィネグレットソースで和える形もおいしいですが、デンマークらしいのは、旬の地海老を組み合わせたサラダです。「海老のカクテル」と呼ばれるこのサラダは、1980年代に大流行したため、今ではレトロ感の高い一品。1990年代にはお客さまをもてなす前菜として浸透していたため、デンマークで暮らし始めた当初、あちこちのご家庭でこのサラダをいただいた記憶があります。現在も初夏の一品としてこのサラダを楽しむ家庭は多いようです。前述の「北欧料理大全」(85 ページ)でもご紹介していますので、ご参照ください。

オランデーズソースも卵ベースですが、アスパラガスは卵との相性が抜群です。塩や塩麹で調味した溶き卵やキッシュに使う卵液アパレイユ(卵と生クリームもしくはサワークリームを合わせたもの)と一緒にオープン・オムレツや皮なしキッシュのようにオーブンやフライパンで焼いてもおいしいですね。卵料理にがライ麦パンをつけ合わせるのがデンマーク風です。

オープンオムレツに関しては、「北欧料理大全」(93 ページ)でご紹介しているレシピをご参照ください。具をアスパラガスに変えてもよいですし、レシピに記載されてある具にアスパラガスを加えてもおいしく作れます。少し多めにつくって、翌日のランチにオムレツをライ麦パンにのせてオープンサンドイッチ形式で楽しむのもお勧めです。ライ麦パンの深みのある味が、卵の優しい味とよく合います。

今年は月替わりでライ麦パンを楽しむ方法をご紹介していますが、今月は、アスパラガスを使ったスモーブロをご案内します。アスパラガスのスモーブロは、レストランではサワードブレッドを軽くトーストして組み合わせることがメインですが、家庭では常備してあるライ麦パンと組み合わせることもよくあります。ここでは、北欧らしくスモークサーモンと合わせてみました。半熟気味の茹で卵や落とし卵、ふんわりしたスクランブルエッグとの組み合わせもおいしいです。

ライ麦パンでのスモーブロは腹持ちがよいので、女性の場合、具をたっぷりのせると一枚で満腹になることが多いですね。お昼に薄めのライ麦パン一枚にたっぷりと具をのせて、ゆっくり食事を楽しむ風景をよく見かけます。「オープンサンドイッチ」はパンに具をのせるという法則以外はフリースタイルですが、「スモーブロ」と呼ぶ場合、土台となるパンが見えなくなるくらい盛り付けるのが定番。穀物メインにならず、タンパク質や野菜を組み合わせた栄養バランスのよい一品に仕上げることができるのは嬉しいですね。スモーブロの専門店などでの「スモーブロ」は、メインの具材に10種類近くのさまざまな食感や風味の脇役が彩りよく飾られて美しく仕上がっています。

デンマークでは、オープンサンドイッチの仲間として「スモーブロ」と「◯◯ごはん」が存在します。ざっくり分けると「スモーブロ」は複数の素材で高く盛り込まれていることが多く、ナイフとフォークで楽しんで食べるイメージです。「◯◯ごはん」は、シンプルな盛り付けで、手に持ってさっと食べるタイプを指すことが多いです。アスパラガスを使う場合は、「アスパラガスごはん」になりますね。この場合は、クリームチーズもしくはフムスを塗った上に硬めの茹でたアスパラガスをのせるだけ。簡単ですね。クリームチーズやフムスは、手で持った時、アスパラガスがぐらつかないための役割を持ち合わせます。手で食べる場合は、ライ麦パンを半分にカットし、パンの長い辺に合わせた長さにアスパラガスの長さを揃えると食べやすいですね。

今回のレシピは、さっと茹でたグリーンアスパラガスにスモークサーモンを組み合わせたシンプルなスモーブロです。トップの写真は、素材の組み合わせがわかりやすいように具を少なめにしていますが、実際には、具をパンが見えなくなるほど盛り付けてお楽しみくださいね。


アスパラガスのスモーブロ


材料

  • ライ麦パン 8〜10 mm厚のスライス一人あたり1枚 [*1]

  • クリームチーズ[*2] 適宜

  • アスパラガス 一人あたり2〜3本(大きさによる)

  • オリーブオイル 小さじ¼〜½ (お好みで)

  • 自然塩 ひとつまみ

  • スモークサーモン[*3] 一人あたり1〜2枚 (お好みで)

  • 胡椒(できれば白胡椒)


作り方

 <アスパラガスを茹でる>

1.     根元の固い部分を切り落とし、根元側の皮をピーラーで3〜5cmほど薄くむき取る。

2.     アスパラガスが入る大きさのフライパンもしくは浅鍋に湯を沸かし、湯1Lに対し塩小さじ2杯(分量外)を加える。塩は湯量の1%くらいが目安。

3.     アスパラガスの軸から先に入れ、20~30秒ほどしたら、倒すようにして全体を入れる。その後、1分〜1分30秒ほど、箸で軽く上下を返すように中火で茹でる。

4.     茹で加減は、真ん中より下の部分に竹串を刺し、スッと通る手前の竹串が少し引っかかるくらいでOK。

5.     色をきれいに仕上げたいので、茹であがったアスパラガスは、1分くらい冷水につけて冷やす。

6.     アスパラの水気をキッチンペーパーでふき取り、食べやすい大きさに切り分ける。

<組み立てる>

1.     ライ麦パンにクリームチーズを塗る。

2.     アスパラガスをオリーブオイルと塩で調味する。

3.  スモークサーモンを彩りよく配置する。

4.     ディルを飾り、胡椒を挽く。

 NOTE:

*1 ライ麦パンの厚さは、お好みや食欲に合わせて調節してください。私は、9~10 mmくらいに切るのが好きです。

*2 豆のペーストでもおいしいです。

*3 さっと茹でた小海老を使ってもおいしいです。

<ヴィーガン対応>

ライ麦パンの上にフムスなどの豆のペーストを塗り、茹でたアスパラガスをのせ、ローストしたヘーゼルナッツや胡桃とあさつきなどのハーブで飾る方法がお薦めです。フムスの下のジェノベーゼペーストのようなハーブペーストをぬっても味に深みがでます。

<ライ麦パンの入手について>

デンマーク風のライ麦パンは、「広島アンデルセン」およびその通販サイト「アンデルセンネット」で「ソフトカーネラグブロート」という名前で販売されています。アンデルセン・デンマーク店で人気の高いライ麦パンを再現しているそうです。


写真撮影: Jan Oster

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