Rugbrødscrutoner

ライ麦パンのクルトン

デンマークでは10月に入ると冷え込みを感じます。秋は湿気が多いため、寒さを厳しく感じ始めるのもこの頃。ダウンコートを着込んでいる人もよく見かけます。この湿気のせいか、森や街路の木々は美しく紅葉し、いろいろな種類の苔も繁殖し、この時期独特の美しさを感じます。

秋の味覚「芋栗南瓜」のうち、緯度の高いデンマークではかぼちゃの生産が盛んです。さつまいもはスペイン、栗はイタリアやフランスから入手しています。かぼちゃの生産は、秋のしつらえに使う小さなタイプと食用かぼちゃが伝統的ですが、最近では、ハロウィンのイベントが秋の楽しみとして定着しつつあり、かぼちゃをくり抜いて、中に蝋燭を灯す「ジャック・オー・ランタン」に使うかぼちゃも生産されています。

9月から3月まで楽しめる食用のかぼちゃは、西洋かぼちゃに属する「ホッカイドウ」と呼ばれている品種が主流です。形は栗かぼちゃに似ていますが、皮は橙色で、たいていは栗かぼちゃよりも水分量が多いように感じます。縦半分に割ってオーブンで焼いた果肉をポタージュの素材として使うレシピをよく見かけます。少し大きめに切って少量の油で和えてからオーブンで焼くと、表面に香ばしく焼き色がつくので、そのまま付け合わせにしたり、生野菜と一緒にサラダに仕立てる手法も定番になりつつあります。

デンマークで一般的にスープといえば、なめらかな食感のポタージュを指します。不文律があるかのようです。面白いなと思うのは、ポタージュスープの上にさまざまな食感の食材をトッピングする手法。クリーミーなポタージュでトッピングを和えるようにして口に入れると、ゆっくり噛むことで、いろいろな味わいや食感が楽しめるスープです。

ポタージュのトッピングは、シャキシャキ感のあるもの、パリパリ感のあるもの、酸味のあるもの、香りのあるもの、まろやかさを出すものなど、食感の異なるものが多岐にわたります。りんごの角切りやケールの粗みじん切り、炒ったアーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツ、かぼちゃやひまわりの種などは、定番中の定番。そして、忘れてはならない存在が、ライ麦パンのクルトンです。

ライ麦パンのクルトンは、パン一本を数日で食べきれそうにないなぁと思い始めた頃に、その日に使う分を取り分けた後、残りを角切りにして、オリーブオイルや菜種油をさっとまぶして180℃のオーブンでカリカリに焼いておきます。粗熱がとれてから保存容器に入れておくと、数週間ほど常温で保存できます。あっという間になくなることが多いので、保存食と言えないかもしれませんが、スープのトッピングとしてだけではなく、おかきのように食べてもおいしいですし、サラダなどにも使えるので、作っておくと重宝します。ライ麦パンの複雑な味が、クルトンという形で万能調味料に生まれ変わる、そんなイメージで使っています。

ライ麦パンのクルトンには、砂糖衣がついた「かりんとう」のような甘いクルトンも存在します。伝統的なデザートスープに使うためか、この砂糖がけのクルトンにはどこか郷愁的なイメージがあります。

秋を代表するデザートスープは、エルダーベリーのスープです。5月から6月にかけて咲くエルダーの花は、レモンのスライスと砂糖と一緒にシロップにします。ほんのり甘く芳しい香りが特徴で、夏の間、梅シロップのように水で希釈して、冷たいドリンクとして楽しみます。10月にエルダーの実、エルダーベリーが熟すと、房ごと鍋に入れて30分近く煮出し、煮汁を漉し、とろみをつけて温かいデザートスープとして楽しみます。エルダーベリーの深い紫色が美しいスープです。

エルダーは西洋接骨木(ニワトコ)とも呼ばれており、ラテン語ではSambucus nigraという表記になります。自然遊歩道の道沿いや田舎道などに自生していることが普通で、その実は9月下旬から10月中旬かけて熟します。食用の歴史は石器時代にまで遡ります。また、優れた薬効と汎用性を持つ民間薬として、風邪などの感染症の薬としても使用されてきました。強い抗酸化作用を持つポリフェノールやビタミンA、E、Cを豊富に含んでいるため、老化や病気の予防、目の健康維持、美肌などに効果があると言われています。冬に罹りやすい風邪やインフルエンザの予防効果があることは学術研究でも検証されています。毒性があるため生食できないのですが、加熱すると抗酸化物質やビタミンを享受できます。デザートを楽しみながら風邪の予防にも役立つのだから、一石二鳥ですね。

エルダーベリーのデザートスープには、サワードゥブレッドや食パンで作るクルトンでもおいしいのですが、ライ麦パンの砂糖がけクルトンとの相性は格別です。デザートスープの甘みを控えて、エルダーベリー本来の味を楽しむことができるように思っています。ホイップした生クリームや水切りヨーグルトなどを添えて、エルダーベリーに含まれているわずかな酸味や苦味を和らげながらスープを楽しむ人もいます。

今回は、ライ麦パンで作る塩味クルトンと砂糖がけクルトンのレシピをご紹介します。合わせて、エルダーベリー・シロップから作るデザートスープもご紹介します。エルダーベリー・シロップの入手が難しいようでしたら、ぶどうやりんごのストレート果汁でお試しください。身体が温めるおいしいスープが作れます。


ライ麦パンクルトン2種


材料

<塩味クルトン>

  • ライ麦パン 4枚(約200 g)

  • EXオリーブオイル[*1] 適量(大さじ1)          

  • お好みのハーブ(タイムなど)適量

  • 塩 適量

<砂糖がけクルトン>

  • ライ麦パン 4枚(約200 g)

  • バターもしくはメープルシロップ 大さじ1

  • 砂糖   20〜40 g(お好みで量を調節してください)


作り方

<塩味クルトン>

1. オーブンを200℃に余熱する。

2. ライ麦パンを小さめの角切りにする。

3. オイルを入れたボウルにライ麦パンを加えて、ライ麦パンにまんべんなくオイルが絡めるように、さっと和える。好みでハーブや塩を加える。[*2]

4. クッキングシートを敷いた天板にライ麦パンを重ならないように並べる。

5. 天板をオーブンに入れ、10分ほど、角切りのパンがカリッとなるまで焼く。[*3]

6. 完全に冷めてから、保存容器で保管する。

 

<砂糖がけクルトン>

1. オーブンを200℃に余熱する。

2. ライ麦パンを小さめの角切りにする。

3. バターを入れた小鍋を弱火にかけて溶かし、角切りにしたライ麦パンを加えて、まんべんなくバターを絡める。メープルシロップを使う場合は、ボウルで角切りのライ麦パンにシロップを絡ませる。

4. クッキングシートを敷いた天板にライ麦パンを重ならないように並べる。

5. 天板をオーブンに入れ、10分ほど、角切りのパンがカリッとなるまで焼く。[*3]

6. 完全に冷めてから、保存容器で保管する。

NOTE:

*1 低温圧搾の菜種油も使えます。

*2 ライ麦パンにも塩気があるので、塩を加えなくてもおいしく仕上がります。

*3 フライパンでも作れます。


エルダーベリーの温かいデザートスープ


材料

<エルダーベリーの温かいデザートスープ>

  • エルダーベリーのシロップ(希釈が1:1のもの)[*1]500 ml

  • 水 500 ml

  • 片栗粉[*2] 大さじ2

  • 水 (水溶き片栗粉用) 大さじ2

<トッピング>

  • ライ麦パンの砂糖がけクルトン お好きなだけ


 作り方

1. シロップと水を火にかけ、沸騰させる。[*1]

2. 小さなボウルに片栗粉を水で溶いておく。

3. 沸騰しているシロップ水に水溶き片栗粉を加え、全体をかき混ぜて、とろみをつける。

4. 温かいうちに、甘いライ麦パンクルトンと一緒に供する。[*3]

NOTE:

*1 ぶどうやりんごのストレート果汁を使う場合は、水で薄めない状態でお使いください。シロップと水の総量がストレート果汁の分量です。

*2 本葛を使ってもおいしく仕上がります。

*3 好みで、柔らかくホイップした純生クリームや水切りをしたヨーグルトを添えてもおいしいです。

文・レシピ: くらもとさちこ
写真撮影: Jan Oster

<ご案内>
掲載写真はInstagram @sachikokuramoto.dkでもご紹介します。

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