Efterårs glæder
秋の楽しみ
デンマークの秋は、3ヶ月ほどの明るく美しい夏のあと、半年以上続く暗く長い冬へと向かう、移り変わりの季節です。朝、学校や仕事に出かける時間帯が暗くなり、気温が徐々に下がり、風に湿気を感じるようになる頃、サマータイムが終わり、日本との時差は7時間から8時間に変わります。時計を1時間戻すことで、朝が少し明るくなり得をした気分になりますが、実際には時間をずらしただけなので、夕方は1時間分ほど早く暗くなります。
夏のあいだ、できるだけ外で過ごしていた暮らしは、秋が深まるにつれ、室内中心の過ごし方へと移行します。手仕事や芸術鑑賞の時間が増えるのもこの頃からで、文化的なイベントも盛りだくさんです。
日照時間は徐々に短くなり、気温が下がるとともに湿気は増していくので、私の記憶にある、穏やかで明るくからっとした瀬戸内の秋とはずいぶん異なります。そんな気候の中だからでしょうか。「散歩」は老若男女を問わず大切にされているように感じます。秋の散歩は街路樹や公園や森などでの紅葉が楽しめますが、視覚的な美しさもさることながら、歩くたびに落ち葉が奏でる音も楽しめます。落ち葉の重なり方だけではなく、湿度によっても音が変わりますし、森の中の落ち葉と石畳の上の落ち葉でも音が異なります。秋は、どこを散歩しようかなと考えるとき、歩くときに聴こえる音でルートを決めることが多いのです。
こども園や幼稚園、こどもがいる家庭では、雨が降っても風が吹いても必ず散歩に出かける習慣があります。雨上がりの散歩では、水たまりの前で順番待ちができている光景もよく見かけます。二部式の防雨着としっかりしたゴム長靴を身につけ、水たまりでバチャバチャと繰り返しジャンプするのは、雨の後のとっておきのお楽しみです。
秋にはマロン(マロニエの実)やどんぐり拾いも楽しめます。拾ったマロンにマッチ棒を差し込み、動物の形にして遊ぶ習慣もあります。数時間くらいのひとときですが、秋の形や色、香りや音を楽しみながら、五感が研ぎ澄まされていく感覚を味わえます。
Photo: © Jan Oster 文: くらもとさちこ
*「秋ヒュッゲ」というコラムをアンデルセングループの公式サイトに寄稿しています。併せてご高覧ください。