Nyttehaven

家庭菜園

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夏至が過ぎると気温も20度を超える日が増え、デンマークは明るく爽やかな夏を迎えます。夏至を境に日照時間は短くなっていきますが、7月の朝は4時前後から白み始め、夜は8時あたりから11時近くまで数時間の黄昏どきが楽しめます。

サマーハウスでの暮らし、観光や海水浴、サイクリング、キャンプなど、夏にはいろいろな楽しみがありますが、「コロニーガーデン」という小さめの庭で自然を感じながら過ごすことも、都会で暮らす人々の楽しみです。心地よい風を感じたり、子どもたちの遊ぶ声を耳にしながら、畑仕事に精を出したり、お隣ご近所と世間話をしたり、畑仕事の合間にお茶やコーヒーで一息つくこと、どれもデンマークの人々が大切にする「ヒュッゲ」です。

「コロニーガーデン」は「離れ庭」という意味合いですが、賃貸制の小さな庭付き小屋や菜園が連なるスペースで150年近くの歴史があります。元々、産業革命期に工場などでの賃金労働を目的に人々が都市に移り住んだ頃、住宅環境と食状況が労働者階級の健康を損ねる要因となっていました。そこで、健康的な生活への支援として、郊外に自給自足できる大きさの畑を貸し出し、新鮮な空気と自然に触れ、家庭で必要な食材を確保できる環境が生まれました。「市民農園」とも呼ばれるシステムです。

現在、デンマークでは、全国コロニーガーデン連盟に400団体、4万世帯が所属しています。全国コロニーガーデン連盟は政府や自治体から遊休地を借り受け、所属団体に区画を振り分けます。住まいと食の環境は150年前と比べて格段に向上しましたが、都市部で庭つき一戸建てに住むことは難しいという環境は今も変わりません。このシステムには根強い人気があり、数年の順番待ちや審査を経て、念願の庭を借りることができます。

「コロニーガーデン」では、庭の使い方や管理の仕方、公共スペースの手入れなどの規則が各団体で定められ、庭を借り受けた世帯にはその遵守が課されます。所属団体は「コロニーガーデン(離れ庭)」と「デイガーデン(日帰り庭)」に分けることができます。「離れ庭」では夏の半年、そこで暮らすことができ、普通の家と変わりない大きさや設備を持つものもありますが、「日帰り庭」では宿泊が認められておらず、日中のみの使用が条件となっています。「日帰り庭」は「ユーティリティーガーデン」と呼ばれる菜園が主流で、家庭で必要な食材や花などを育てることが条件となっています。水道、電気、下水などはそれぞれの区画に用意されていないことが多く、必要な水は近くの水道まで汲みに行き、お茶やコーヒーを淹れるお湯の確保やトイレは公共スペースに用意された設備を利用します。こじんまりした菜園が連なる様子には独特の風情があり、その眺めを楽しみながら辺りを散歩する人もよく見かけます。

私たち家族は、コペンハーゲン市がかつて城壁で囲まれていた旧市街地から徒歩10分ほどの区域に住んでおり、自転車で15分ほどの郊外にあるオーガニック家庭菜園の団体に所属しています。この団体では、オーガニック農業が課せられ、農薬は使わず堆肥も国が定めたオーガニック規定に基づいたものを使います。また、ホースでの水やりは水を無駄使いする傾向が強いという理由で禁止されており、節水を目的にじょうろでの水やりが義務付けられています。我が家の菜園は平均的な大きさの140平米ですが、水やりには大きなじょうろを使っているにも関わらず、水道がある場所と菜園を二十回以上往復します。畑で野菜、垣根沿いにベリー類を育て、ミツバチから蜂蜜を分けてもらっています。畑の畔には、害虫の駆除に役立つと言われるカレンデュラが活躍し、草むしりの労力を節約するため、そして、ミツバチが花の蜜を集めることができるよう芥子の花やルッコラやタイムを植えています。

つい最近まで、我が家の菜園では、花畑に見紛うほどの芥子の花が咲き誇りました。芥子の花は赤いものだとずっと思っていたのですが、うちの畑で咲く芥子の花は、優しい薄紫色です。北欧の早い朝を待って咲く花の辺りには、ミツバチが花の開くのを今か今かと待っており、花が開くと同時に蜜を求めに花に飛び込む様子は感動さえ覚えます。一日、美しく咲いた花が同じ日の夕方には萎み、翌日には決して花開かないことを知ったときは、自然の定めや儚さを改めて感じました。もう少しすると実が熟し、芥子の実が採取できます。

芥子の花と時期を同じくしてタイムも花盛りを迎えます。タイムは蒸し煮野菜や野菜のスープなどでよく使うハーブなのですが、摘み立てのタイムに熱湯を注いで淹れるハーブティーは、この時期の贅沢。色合いがきれいで、香りを満喫でき、午後のお茶の時間がひときわ楽しみです。

 
 
 
 
 
 
 
 
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