Sådan fejres nytåret

新年の祝い方

デンマークでの新年のお祝いは、大晦日から始まります。ニューイヤーズコンサートは大晦日の午後から開かれますが、老若男女を問わず、大勢の国民が待ち望んでいる行事は、デンマーク王国国家元首マルグレーテ二世女王陛下による新年スピーチ。午後6時から始まります。1880年から続いている国家元首による新年のスピーチですが、第二次世界大戦のドイツ占領下では、このスピーチが特に大きな意味を持っていたと言われています。デンマーク王室は日本の皇室に次いで世界で2番目に古い王室ですが、現在の国家元首であるマルグレーテ二世女王陛下は今月即位50周年をお迎えになりました。女王陛下の親しみやすいお人柄、知性、そして類稀な芸術性は、国民からの絶大な尊敬と敬愛を集めています。

女王陛下の新年スピーチは、去る年を振り返り、来る年の抱負や課題などが組み込まれていますが、陛下のお人柄が色濃く反映されているのが特徴です。約10分のスピーチは元旦の新聞にも全文が掲載されますが、大晦日の午後6時に女王陛下のお言葉を生中継で拝聴するからこそ、よい年越しができると思っている人々が圧倒的な数を占めているように感じます。毎年、スピーチの拝聴を終えると、今回のスピーチはここが素晴らしかった、ここが心を揺さぶられた、など、周りの人々と感想を熱心に語り合うこともデンマークらしい光景です。

大晦日には、新年を寿ぐ料理を用意したり大掃除を行う慣習はなく、女王陛下の新年スピーチを拝聴した後、親しい友人知人とおいしい料理で楽しい夜を過ごし、12時の鐘がなると新しい年をシャンパンで祝うというのが王道です。シャンパンのお供には、デンマークの伝統焼き菓子「クランセケーエ」を用意します。アーモンドと砂糖と卵白が原材料の「クランセケーエ」は1700年代から伝わり、新年のお祝いの他、結婚式や洗礼式などでも使われるおめでたい焼き菓子です。新年のお祝いには、塔の形が定番。お一人様用のサイズを揃えることもあります。大晦日の夜には、新年を祝う花火も数多く打ち上げられ、納涼花火大会さながらの大きな打ち上げ花火が集う様子は壮観です。また、クリスマスにはクラッシックな装いが中心ですが、大晦日には華やかなパーティードレスを新調する方も多いと聞きます。

クリスマス三ヶ日(24日、25日、26日)は祝日で、家族や親族と静かに敬虔に過ごすことが多く、日本のお正月を思わせる雰囲気がありますが、大晦日の夜には日本でのクリスマスパーティーのような賑やかさ華やかさを感じます。

新しい年を迎えた元旦は、森や湖畔、海岸沿いの散歩を楽しむ人を多く見かけます。クリスマスの連休と異なり、お正月の祝日は元旦だけなので、賑やかな年越しの後は、自然の中でゆっくりとした時間が楽しみ、翌日からの日常的な生活に戻るエネルギーを蓄える日という捉え方が一般的です。

コペンハーゲンでのとっておきのお正月行事は、デンマーク王室近衛兵の新年祝賀パレード。

「デンマーク王室近衛兵」は、1658年に時の国王が発足した由緒ある国家元首の護衛隊です。熊の毛皮の背の高い帽子にダブルブレストの上着を飾る勲章やベルトなど、360年以上の長い歴史を持つ近衛兵の制服は、お伽の国から抜け出たような風情で、写真撮影をする人々は後を絶えません。

女王陛下ご在宮の日には、衛兵行進に近衛兵吹奏楽隊と鼓笛隊による音楽が加わります。そして、普段は黒にも見える濃紺の上着ですが、特別な祝祭の日には祝賀装束として赤の上着を纏います。

衛兵交代は毎日行われ、国家元首の居住宮アマリエンボー宮殿と、かつて夏の離宮として使われ、近衛兵の兵舎が併設されているローゼンボー城との間を行進で往復します。11:25にローゼンボー城を出発し、12:00にアマリエンボー宮殿に到着、その後、衛兵交代式が行われ、アマリエンボー宮殿での任務を終えた衛兵がローゼンボー城に戻ります。

元旦に、近衛兵吹奏楽隊と鼓笛隊による素晴らしい演奏とともに祝賀装束の赤い上着を身に纏った近衛兵がコペンハーゲン市街を行進する様子は、デンマークのお正月らしい華やかな行事です。

アマリエンボー宮殿は、八角形の広場の周りに配された4つの館からなる宮殿です。元々、貴族の館として造営されましたが、1794年にそれまで王宮として使われていたクリスチャンスボー城が焼失したため、王宮をアマリエンボー宮殿に移し、以来、歴代の国王とその家族がお住まいになっています。柵もお堀もない宮殿で、一般市民も自由に宮殿広場を通り抜けできますし、王室の特別な催事の折には、王室メンバーがバルコニーで一般市民の歓迎をお受けになります。先の女王陛下即位50周年記念日には、コロナ感染防止対策でさまざまな祝賀行事が順延となりましたが、王室関係の記念日には、宮殿広場は大勢の国民で埋め尽くされるのが恒例となっています。

元旦には、アマリエンボー宮殿広場で近衛兵吹奏楽隊による祝賀演奏が行われます。女王陛下のお膝元で、パレードや衛兵交代を観に駆けつけた一般市民が宮殿広場でその素晴らしい演奏が楽しめるのは、デンマークならではだと思います。(今年の国家演奏は、インスタグラムに投稿しています。よろしかったら合わせてご覧ください。)

我が家には、デンマーク王国近衛兵をお手本としているデンマーク王国少年少女音楽隊「チボリガード」に入隊後、近衛兵を模した制服を身につけて演奏するようになって5年目を迎える14歳の息子がいます。「チボリガード」は、178年の歴史を持つ世界最古の子ども音楽隊ですが、息子が「チボリガード」入隊後に初めて迎えた元旦以降、お手本である近衛兵の元旦祝賀パレードをアマリエンボー宮殿まで追いかけることが我が家での恒例行事に加わりました。

デンマークらしくはないのですが、元旦の朝、お雑煮を食べた後、パレードを観に出かけ、寒い中、宮殿広場で大勢の人々とともに元旦祝賀演奏を拝聴した後、長い散歩をしながら帰途につき、母が送ってくれた心づくしの乾物とデンマークの食材で作ったおせち料理を囲むことが我が家での元旦の楽しみとなっています。

<謝辞> 今回の記事の近衛兵吹奏楽隊に関する情報収集には、デンマーク国立交響楽団の常任クラリネット奏者であると同時に、デンマーク王国近衛兵吹奏楽団の非常任奏者とデンマーク王国少年少女音楽隊「チボリガード」の音楽監督を兼任なさっているクラウス・チュンスホッフ氏がご協力くださいました。ご厚意に心から謝意を表します。

 
 
 
 
 
 
 
 

Photo: Steen Brogaard, Kongehuset ©

Plate: Akiko Ken Made

漆盆: 手塚 勘久

Previous
Previous

Hvorfor spiller børnene i soldateruniform?

Next
Next

Nisse