Rugbrødskursus i Japan

「ロブロ」を楽しむ会

今月の記事では、二週間ほど前に開かれた「ロブロを楽しむ会」をご紹介します。

2022年、デンマーク人にとって欠かせない食材であるライ麦パンをテーマにして、毎月、記事を投稿しました。

デンマークの新学年が始まる8月の記事で取り上げたのは、学校に持っていくお弁当としてのライ麦パン。そのテーマ写真として使ったのが、息子の幼稚園時代から9年生の今まで、ほぼ毎日作ってきたライ麦パンのサンドイッチでした。この写真をインスタグラムに投稿した時、真っ先に「とってもデンマークらしいけど、こんなに美しいサンドイッチをお弁当に持っていく子は稀かもね。」というコメントを入れてくださったのは「北欧料理大全」の著者カトリーネ・クリンケンさんでした。 

実は、このサンドイッチ、息子が通っていた幼稚園で給食プロジェクトに携わっていた頃、週一回、保育の仕事に終わった夕方に行われる職員会議用に作り始めたものです。ケーキでもよかったのだけれど、甘いものは血糖値の急上昇と急下降を招き、くたくたの身体に余計な負担がかかるような気がして、サラダやキッシュなどの軽食を出すようにしていました。しかし、職員会議では紙や道具が散乱しがちなので、コンパクトなものが望ましく、手に持って食べることができ、職員会議の後は片付けなしで1分でも早く帰宅したい、帰ったら何も作りたいない、などという声を聞き、試行錯誤の中で落ち着いたのがこのサンドイッチでした。以降、息子への食事やおやつ代わりとしてだけではなく、夫が参加する会議の差し入れにも使い、あちこちのイベントにもお持ちし、いったい何組作ってきたのだろうと思うほど、繰り返し作ってきた思い出の深いサンドイッチです。入れようと思えば、たくさん入れることができる野菜の量も作り続けてきた理由の一つかもしれません。ライ麦パンはよく咬むことを覚えることができる食材としても定評があるので、しっかり噛みながら食べてほしいと願う気持ちも強かったように思います。温め直しが必要なく、常温で数時間おけるので、息子のお留守番ごはんとしても定番で、留守番を一緒にしてくれる人の分まで作って出かけていました。

今年1月、徳永久美子さんが「とてもおいしそうです!お話も素敵です。」という嬉しいメッセージを送ってくださいました。徳永久美子さんはパンをおいしく食べるというテーマで数々のご著書をお持ちですが、私も以前からご著書を繰り返し拝読していたファンの一人でした。徳永久美子さん(以下、久美子さん)がご主人と一緒に経営なさっていて、自らパン製造にも加わっていらっしゃるベーカリーが東急田園都市線のあざみ野駅から車で10分ばかりのところにある「ベッカライ徳多朗」さんです。この「ベッカライ徳多朗」さんは、息子が小学2年生から横浜シュタイナー学園に毎年特別編入させていただいていた関係で、息子が通うクラスのお母様方によくお誘いを受けて通わせてもらった思い出深い場所でもありました。

久美子さんからご連絡をいただいたのは、ちょうど息子の特別編入が近づいている時期でした。帰国した際には「ベッカライ徳多朗」さんをお伺いしたいと思っていたので、お伺いする際にデンマークのライ麦パンをお持ちして、一緒にご希望のサンドイッチをお作りしましょうかとご提案しました。お忙しい中、お時間をいただき、ご用意くださった食材でライ麦パンのサンドイッチを作り、スタッフの皆さんにもご試食いただいて、至福のひとときを楽しみました。その後、私たちだけではもったいないからと、「ロブロを楽しむ会」をご自宅で開催するというお申し出を頂戴し、インスタグラムでの告知から当日への準備に至るまで全ての工程をご準備いただき、当日を迎えました。

ちなみに、デンマーク語では、ライ麦パンをrugbrødと記し、ロブロと発音します。rugはライ麦、brødはパンを指します。「ルブロ」という日本語表記もお見かけしています。私の耳には、rugが「ロ」と聞こえるので、「ロブロ」と表記しています。ライ麦パンは、北ヨーロッパのあちこちで焼かれてきましたので、ドイツにもスウェーデンにもさまざまなバリエーションが存在します。「ロブロ」という名称が愛称のように使われることで、「ロブロ」=「デンマークのライ麦パン」と特定できるというメリットだけではなく、特別な思い入れが生まれると素敵だなと思っています。

12名がお集まりくださった「ロブロを楽しむ会」は、久美子さんのデモンストレーションで「ロブロ」を使ったお祝いケーキの生地の準備で幕を切りました。このケーキは以前の記事でも紹介している我が家の定番ですが、「北欧料理大全」の101あるレシピの中でも、唯一、私のレシピを使ってもらっています。久美子さんのお母様のお誕生日にも焼かれて喜ばれたというエピソードは、こちらでご紹介されていますが、私はライ麦パンをお祝いのケーキにまで展開しておいしく食べてしまうという心意気が大好きです。夫の故郷の伝統的な祝い菓子ということも手伝い、かれこれ25年近く繰り返し焼いています。

ケーキの生地をオーブンに入れると、ロブロの生地の仕込みをデモンストレーションしていただきました。ライ麦にはグルテンがあまり含まれていないので、グルテンの生成を考えなくてもよいという点が、小麦ベースのパン作りとライ麦でのパン作りが大きく異なる部分です。

ボウルで材料を混ぜ、まんべんなく粉と水分が混ざったら、少しばかりボウルで生地を休ませ、その後、パン型やパウンド型に生地を流し、型の中で発酵させます。数時間して少しばかり生地が高くなると、湿度のあるオーブンで中心温度が98度になるまで焼成します。久美子さんは、差し替えの発酵生地を用意してくださっていて、差し替え生地が入った型をオーブンに入れる実演が続きました。私が使っているオーブンは蒸気の量や時間が設定できるので、久美子さんが説明してくださった一般的な家庭のオーブンでの蒸気の入れ方が、とても参考になりました。

その後、サンドイッチの作り方やコツをデモンストレーションし、その後、受講者のみなさんご自身にも作っていただきました。久美子さんのご子息まさおさんがその場で用意してくださったクルトンに合わせたのは、新にんじんのポタージュ。久美子さんの「おいしいおはなしお料理ノート」vol.12に掲載されているレシピです。デンマークのおうちオープンサンドイッチの定番「卵とトマトのスモーブロ」(北欧料理大全P.53)もご紹介しました。我が家の自家製はちみつを使った、ロブロx発酵バターxはちみつという黄金の組み合わせからなる「はちみつごはん」もご試食いただきました。最後を飾ったのは、自家製ヨーグルトにトッピングしたロブロの甘いそぼろ(北欧料理大全P.33)とロブロのお祝いケーキ(北欧料理大全P.191)。私は、このケーキをお出しする時に、「わぁ!」と言ってくださるのを聞くのが何よりの楽しみにしているのですが、この日も皆さんの歓声を聞くことができて幸せでした。

あっという間で盛り沢山の二時間でした。お土産は、久美子さん自ら大切に育てて下さったライ麦のサワー種。これがあれば、あとは比較的入手しやすいシンプルな食材で思い立った時に作れるから・・という久美子さんの温かいお気持ちがこもったお土産でした。翌日からつくレポのご報告を続々といただき、それが揃いも揃って素晴らしい焼き上がりだったことに感激しました。ごはんを作るように作って欲しいと仰っていた久美子さんのお気持ちがみなさんに伝わっていたことを改めて実感しました。

今回の講座は、発売開始3分で売り切れたとお聞きしました。私も参加したかった!と思られた方がいらっしゃるかなと思いまして、今回の記事では、私がいつもデンマークで作っている「ロブロ」のレシピをご紹介します。難しくないので、ぜひお試しください。

私は100年くらい繋いであるサワー種を使っていますが、サワー種もヨーグルトの乳酸菌とイーストで発酵を促す簡易版だと、簡単に自分で作ることができます。デンマークで家庭版として紹介されることが多いこの方法だと、比較的安定したサワー種が仕込んで3日日から使えます。サワー種は入手が難しいと思うので、ぜひ、ここでご紹介する方法でサワー種を起こして、ライ麦パン「ロブロ」をお作りになってみてください。

何かわからないことがあれば、こちらからお問い合わせくださいね。ご健闘を祈っています。


デンマークのライ麦パン『ロブロ』


材料

<ロブロ用サワー種>

  • 自然塩 2 g

  • 生はちみつ 2 g

  • プレーンヨーグルト(無糖) 50 ml

  • ぬるま湯 100 ml

  • ライ麦全粒粉 100 g

  • ライ麦全粒粉(2日目分) 50 g

<ロブロ生地>

  • ぬるま湯(37℃くらい)520 g

  • ロブロ用サワー種 180 g

  • ライ麦全粒粉(細挽き)350 g

  • 砕きライ麦(ライフレークやライシュロートで代用可) 200 g

  • 自然塩 10 g


作り方

<ロブロ用サワー種> 

  1. 2日目分のライ麦全粒粉以外の材料をボウルかガラス瓶に入れ、箸でよく混ぜる。(道具は清潔なものをお使いください。)

  2. 晒しかキッチンタオルで多い、一日、常温に置く。

  3. 2日目分のライ麦全粒粉を加えて、よく混ぜ、様子をみて、少しとろっとする状態まで水を加える。もう一日、常温に置く。

ご注意事項: この作業は、ロブロ用サワー種をお手持ちでない場合、初回に限ってご利用ください。2回目からは前回の生地の一部がロブロ用サワー種として使えます。


<ロブロ>

  1. 大きめのボウルにぬるま湯を入れ、サワー種を加えて溶かす。

  2. 残りの材料を加え、木べらで粉が残らないように混ぜる。ふきんをかけて、30分ほど置き、もう一度、全体をよく混ぜる。

  3. 180 gほど生地を清潔なガラス瓶に取り分ける。取り分けた生地がガラス瓶の6割に収まる余裕があるガラス瓶がおすすめ。ロブロを焼く段階までふきんをかけて常温に置いておく。<重要>この生地が、次のロブロ用のサワー種になる。

  4. 残りの生地をパン型もしくはパウンド型に入れ、常温で3〜5時間ほど発酵させる。生地が2cmくらい持ち上がれば発酵完了。

  5. 表面の乾燥を防ぐため、水がついた手で生地の表面を丁寧になでる。

  6. 190℃の予熱したオーブンに蒸気を加え(怪我しないよう十分に気をつけてお湯をオーブンの底に加えるなど)、発酵完了の生地が入った型をオーブンの最下段に入れる。

  7. 室温に置いておいたサワー種の素が入っているガラス瓶の蓋を軽くして冷蔵庫に入れる。サワー種に空気が少し入るように。キッチンペーパーや晒しを蓋と瓶の間に入れておくとよい。

  8. 190℃で1時間半を目安に焼く。中心温度が98℃になっていることを確認できると安心。

  9. ロブロを型から出し、クーラーで常温まで冷ます。

  10. きれいにスライスしたい場合は、一日置いてから生地を落ち着かせてから切る。焼き上がって20時間以内にスライスすると、包丁に生地が残ってしまうことが多いが、中心温度が98℃になっていれば生焼けではなく、翌日にはきれいに切れる。

註)本来のサワー種は、水とライ麦全粒粉だけで一週間くらいかけて作ります。今回ご紹介した方法は、ヨーグルトの乳酸菌に発酵を助けてもらう簡易版です。ヨーグルトは豆乳ヨーグルトでも作れます。このレシピでは、一回のロブロ生地に必要な180 gを使った後、もう一回分くらいが残りますが、安定したサワー種が作りやすいので、記述の分量でお試しください。残ったサワー種は、冷凍庫で保存できます。万が一、生地を取り分け忘れた時などに使えます。小麦ベースのパン生地に少し加えても風味がよくなります。


写真協力: 徳永久美子さん
文・レシピ: くらもとさちこ

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